―合気について―
第6回
『私が長年言い続けていた事と、堀川幸道先生に伝えられた言葉』
2018年平昌冬季五輪について思う1つ目は、最後まであきらめるな!
2月11日、クロスカントリースキー男子30キロ・スキーアスロンでノルウェーのシーメン・ヘグスタッド・クルーゲル選手は、1時間16分20秒で金メダルを手にしたこと。クルーゲル選手は、スタート直後転倒し、最後尾から追う展開になったが、レースをあきらめず67人抜きで、五輪初出場で金メダルを取ったこと。クルーゲル選手は我慢強さの天才。
2つ目は、17日にチェコのスノーボードのエステル・レデツカ選手が、スキーのアルペン競技、女子スーパー大回転と、24日のスノーボード女子パラレル大回転とで金メダルを手にしたこと。異種目?で金メダル2個、前人未到の出来事。レデツカ選手は、滑りの天才だと思います。板が1枚なのか2枚履いて滑るのかの違いで、ストックを使うか、使わないかの違いで、山の斜面を滑るのには同じだと思います。
大分昔のある時、バレースキーをしていた時に、板と体の重心移動によって、直線にも回転にも滑ることが出来た。直線と回転が一つになれば、理想的な大回転の滑りが出来るはずである。アイスバーンでは普通はスキーの板が曲がってしまい、なかなか思い通りには滑ることがむずかしいのである。大回転・回転競技では必ずエッジで削れてアイスバーンになる。皆は滑るコースをどうとるか。エッジを使ってどうすべきかが課題だと思います。体と板の重心の移動の中に、できるだけエッジを立てるのを控えて、重心中心移動で乗り越えられないか。
昔から、スキーはパワーで滑ると言われて来た理論をひっくり返したこと。大回転は特に、パワーよりも重心の移動と減速させない滑りが大切であることを、レデツカ選手は証明した。
いかにエッジを立てずに重心を板の中心に乗せて、目標コースのラインの中心に合わせて滑るかである。私が若い頃、アイスバーンになった山の斜面を、いかに滑るかが課題であった。スノーボードの選手がスキーの選手を破ったことが、今世紀最大のニュースになった。そしてエッジばかり立てて滑べるスキー技術では今後の優勝は、むずかしいのではないであろうか。オリンピックのメダルは「金」が一番良いことだが、金メダルの内容にみあった滑り方が一番大切なことの様に思われる。
今回の平昌冬季五輪と、武術とでどう関係があるのかと思われる人々の為に、「パワー」すなわち「力」も大切だが、その「力」をいかに強く早く無駄なく使い続けられるかが、勝敗の鍵であると指摘したい。
人生は長いのである。年老いた時、「力」も又、年老いるのであるから、すべての生物が、少なくなった「力」をどういうふうに使うのか。「力」を使わなくなった時、使えなくなったら、次の世界から迎えに来る時です。
堀川幸道先生が「何事もあきらめずに、技を磨き続けること。大東流も同じ人間が作った技と術なのだから……」と言われていた事を思い出しました。
きっと、「技」と「術」の先(奥)に『合気』が見えてくるような気がします。
つづく